インタビュー

写真家

浅田 政志


宮崎牛を育てる農家の写真集を作る企画をはじめて聞いた時、どんな心境でしたか?


肉用牛農家さんの暮らしに密着するのは無論初めての経験ですし、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、未知の世界に踏み込むような気持ちでした。日々の営みの中でどのように牛と関わっているのだろう、牛を養う上での喜びや苦労はどんなだろう。自分が気になることは、ささやかなポイントだとしてもすべてこの目で確かめて写真に収めたいと思って挑みました。



浅田さんにとって、家族写真とはどんなものですか。また、今回の「宮崎牛家族」の取材で強く心に残っていることなどあれば教えてください。


僕にとって家族写真の撮影は生きがいです。家族という集合体ならではの化学反応があり、現場はなんとも言えず楽しいです。
「宮崎牛家族」での撮影では、宮崎牛の肥育農家という共通項がありながら、12のご家族それぞれに豊かな特色があります。強く心に残っているのは、どのご家族も中心に牛がいて、その中心にどのように関わるか、家族の方針のようなものが短い時間の中でも見て取れたことです。一生懸命お父さんの背中を追いかける子供たち、ちょっと反発しつつも力をあわせて牛を養う親子、親と子供は別の人生だから、と夫婦二人での営み……。こうやって一つとして同じものはない「宮崎牛家族」の物語が受け継がれていくのだな、と感じました。



写真集『宮崎牛家族』にはどんな想いが込められていますか。


牛は生きていますので、肉用牛農家さんは365日ほぼ休みがない状態です。餌やり、掃除、健康状態の観察と毎日欠かすことなく牛を養います。農家さんによっては朝から夜までゴム長靴を履いたまま歩き続け、僕はカメラを持って追いかけるだけなのにへとへとになってしまったこともあります。それくらい重労働なのです。

しかし、写真集を見返すと、牛の養い方にこだわりを持ち、試行錯誤しながら前向きに誠実に手を抜くことなく牛に向き合っている。額に流れる汗は勲章のようです。そしてその姿を家族が見つめ、どのように手を取り合って歩いているのか、その姿をじっくり見て欲しいと思います。









写真家

浅田 政志

1979 年三重県生まれ。
日本写真映像専門学校研究科を卒業後、スタジオアシスタントを経て独立。
2009 年、写真集『浅田家』(2008 年赤々舎刊) で第34 回木村伊兵衛写真賞を受賞。
同年、浅田の活動を追ったドキュメンタリー、『家族記念日』(中部日本放送)は、第46 回ギャラクシー賞および第5 回日本民間放送連盟賞最優秀賞を受賞した。
2010 年には初の大型個展、『Tsu Family Land 浅田政志写真展』を三重県立美術館で開催。パルコギャラリー、森美術館、入江泰吉記念奈良市写真美術館、香港国際写真フェスティバル、道後オンセナート等、国内外での個展やアートプロジェクトにて精力的に作品を発表している。







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